2012-05-15(Tue)
あ・うん / 向田 邦子
![]() | あ・うん (文春文庫) 向田 邦子 文藝春秋 2003-08 by G-Tools |
つましい月給暮らしの水田仙吉と軍需景気で羽振りのいい中小企業の社長門倉修造。
二人の間の友情は、まるで神社の鳥居に並んだ一対の狛犬あ、うんのように親密なものであった。
太平洋戦争をひかえた世相を背景に、男の熱い友情と親友の妻への密かな思慕が織りなす、
市井の家族の情景を鮮やかに描いた著者唯一の長篇小説。 内容(「BOOK」データベースより)
私は脚本を読むのが好きではないので、向田邦子をつい読まないできていた。
なんてもったいないことを。
食わず嫌いはいけませんね。
文芸春秋から1981年に出版されている小説版は、とてもとても良かった。
何をやってもさまにならない月給暮らしの仙吉と、何をやっても絵になる社長の門倉。
共通点一つないように見えて、狛犬のように二人で一つの友情。
すべてを手にしている門倉が、ひそかに愛するのは仙吉の妻で。
門倉の想いを感じながらも、気付かぬふりをする妻の艶めかしさったら。
『釣りバカ日誌』のハマちゃんとスーさんみたいに可笑しいのに。
母のほんの僅かな色気を観察する娘の視点が、きりりと流れを引き締める。
太平洋戦争が近づく時代の、人と人との繋がりの深さを感じます。
儲け話に夢を抱く豪胆さ、嫁入り前の娘の純潔、2号さんに3号さん。
バックに控える話にも無駄がなく、端役の誰もが魅力的。
手を添えても溢れ出してしまうほどの男の友情に、胸がいっぱいになりました。
心がどこまでも豊かになれる名作。
大好きになりました。
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