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オレンジの壺 / 宮本 輝

2016/08/02
 

佐和子・25歳―とりたてて不幸なことなど何もない、しかし決して幸福ではない。

ある日、亡き祖父から残された日記帳を読んだ佐和子は、重大な秘密を知る。

パリへ旅立ち、祖父の本当の姿を探し求める彼女は、いつしか大切な何かを追い求めている。

平凡な自分に何ができるのか?

佐和子が見つける答えは―。

女性のひたむきな成長を描く宮本文学の傑作。 内容(「BOOK」データベースより)



結婚一年で離婚に至った25歳の主人公:佐和子。

元夫から別れ際に残された言葉が、彼女の心に深く突き刺さっている。

お前には、どこも悪いところはない。だけど、いいところもぜんぜんないんだ。女としての魅力も、人間としての味わいも、まったく皆無だ。


開始早々、このたった一つの台詞で、主人公の人となりをズバッと見せてしまうなんて。

印象的な言葉選びがとても美しい。

宮本作品を好きに思う要因の一つです。


また、描かれる人物からは、いつも独特の色のなさを感じます。

色彩の無さ。

単に平面的と言うのではなく、立体的な人物でありながら、少しパサついたような寂しさ。

生命力とかガツガツしたものがない。


そんな25歳にして辛辣な言葉を浴びてしまった佐和子が、いかにして自信を取り戻していくのか。

祖父の残した日記を元に、過去に遡る旅がとても物悲しく美しかったです。


この物語の中で過去に遡るうち、見えてくることと、見えてこないものが出てくる。

多くの人が亡くなっている今、想像のみで隙間を埋めなければならないこともある。

人の心を想像して、それでも結論を出すべきか。

人を傷つけてまで蒸し返さなくとも、分からないことは、分からないままでいいのではないか。

祖父の日記を前に葛藤を繰り返しもがく様が、とても誠実でした。

分かりやすく面白い娯楽作品ではないですが、宮本輝さんはやはり好きな作家さんです。



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11:39 宮本 輝 | コメント(2) | トラックバック(0)

隣の女 / 向田 邦子

2015/05/14
隣りの女 (文春文庫)隣りの女 (文春文庫)
(2010/11/10)
向田 邦子

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「一生に一度でいい、恋っての、してみたかったの」

平凡な主婦が飛び込んだNYへの恋の道行を描いた表題作。

嫁き遅れた女の心の揺れを浮かび上がらせた「幸福」、「胡桃の部屋」。

異母兄弟の交流を綴った「下駄」。

絶筆となった「春が来た」の五篇を収録。

温かい眼差しで人間の哀歓を紡いだ短篇集。内容(「BOOK」データベースより)



「隣の女」とタイトルを見ると、それは主人公の女と隣の女が対比して描写されるのかなと、読む前から想像してしまう。

ある程度心づもりをして読み、実際想定内のことのはずなのに、読後、想像以上に深い部分が揺らされる。

残るのはいつも、柔らかくて、淡くて、淋しい気持ち。


良く考えたら、向田さんの作品にはいい女が出てこない。

隣の女が連れ込んだ男と情事を始めると、内職のミシンの手を止め、耳をそばだててしまう主婦。

相手が遥かにいい女だったら、それは別世界の話なのだろう。

だが相手の女も住む世界は違えど、間違いなく男の行動に一喜一憂してしまう小さな女。

対比のようで、似たような淋しい影もまた隣り合わせ。

表面的な勝ち負けではない、誰にでも内に持っている弱さが炙りだされる。


向田さんの作品を読んで、ぱっと晴れやかな気持ちにはならない。

かといって、完全に失望して終わるものもない。

女の底力と背筋の伸びた美しさを教えてくれ、また、頑張った強い女が「孤独」という貧乏くじを引く虚しさを、自嘲気味に見せる。

きっと男性受けはしないのだけれど、同性から見たら可愛い女。

それを美しい言葉と、時にリアルな激しい描写で同時に見せるから、とても素敵。



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21:04 向田 邦子 | コメント(0) | トラックバック(0)

ソロモンの偽証 第Ⅱ、Ⅲ部 / 宮部 みゆき

2015/03/30
ソロモンの偽証 第II部 決意ソロモンの偽証 第II部 決意
(2012/09/20)
宮部 みゆき

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ソロモンの偽証 第III部 法廷ソロモンの偽証 第III部 法廷
(2012/10/11)
宮部 みゆき

商品詳細を見る

騒動の渦中にいるくせに僕たちは何も知ろうといなかった。

けど、彼女は起ちあがった。

校舎を覆う悪意を拭い去ろう。

裁判でしか真実は見えてこない!彼女の覚悟は僕たちを揺さぶり、学校側の壁が崩れ始めた…

気がつけば、走り出していた。

不安と圧力の中、教師を敵に回して―

他校から名乗りを上げた弁護人。

その手捌きに僕たちは戦慄した。

彼は史上最強の中学生か、それともダビデの使徒か―。

開廷の迫る中で浮上した第三の影、そしてまたしても犠牲者が…

僕たちはこの裁判を守れるのか!? 内容(「BOOK」データベースより)



幸い、記憶のある内に届いてくれた第Ⅱ、Ⅲ部。

久々に骨のある楽しい作品に、一気に読み進めてしまいました。


実際問題、中学生にしては皆賢すぎる。

仕事のあるはずの多忙な親たちが、いいタイミングで常に家に居る。

警察が驚くほど協力的で、大人たちの理解もいい。

その辺り違和感もありますが、設定が今より20年前なので、比較的自由な世の中だったのかなという強引な理由で納得^^


ある程度の流れが読めるものの、最後はどう落とすのか。

先を想像する楽しさがありました。

登場人物が賢過ぎると書きましたが、それでもこの主人公は中学生でなければならなかったと思う。

死に興味があり、殺したくて、死にたくて、誰かに死んでほしくて、それが自分自身なのかもしれなくて…

自分という存在に興味と恐怖がないまぜになったような、周りと距離感がつかめない孤独。

自ら追い込んでしまう小さな存在に、これは中学生でなければ表現しきれないものを感じました。


いじめがあっていいはずはなく、自殺が救いになってもいけないのだけれど、それでも折り合いをつけようとした彼らはすごかった。

単純に良くやったねと、母目線で感動してしまいました。


一つ一つ本当に細かく掘り下げられるので、驚くほど長くなってしまっていますが、それも良かったなと。

いろんな情報の中に、作品を伸ばすために組み込まれた情報は全くないように思う。

登場人物それぞれの家庭環境。

大人同士の軋轢。

細部まで見通せて、かなり消耗しはしましたが、とても読み応えのある作品でした。



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23:47 宮部 みゆき | コメント(2) | トラックバック(0)

ソロモンの偽証 / 宮部 みゆき

2015/03/24
ソロモンの偽証 第I部 事件ソロモンの偽証 第I部 事件
(2012/08/23)
宮部 みゆき

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クリスマスの朝、雪の校庭に急降下した14歳。

彼の死を悼む声は小さかった。

けど、噂は強力で、気がつけばあたしたちみんな、それに加担していた。

そして、その悪意ある風評は、目撃者を名乗る、匿名の告発状を産み落とした―。

新たな殺人計画。

マスコミの過剰な報道。

狂おしい嫉妬による異常行動。

そして犠牲者が一人、また一人。

学校は汚された。

ことごとく無力な大人たちにはもう、任せておけない。

学校に仕掛けられた史上最強のミステリー。 内容(「BOOK」データベースより)



いつもなら全巻読み終わってから感想をまとめて書くのですが、現在第二部は図書館の予約順番待ち。

既に文庫も出ているのに、図書館ではまだまだ人気のようです。

第二部が届くまで感想を覚えている自信がないので、一部だけ先に感想を残しておきます。


この本を発売当初に予約しなかったのは、あらすじが怖かったから。

学校で次々起こる連続殺人。

もしかして…貴志祐介の「悪の教典」、あのハスミンみたいなのが登場するのだろうか (゚ロ゚屮)屮

と、思って躊躇していたのです。


実際読んでみると、今のところハスミンは出てこないがとても面白い。

ずしっと重みがあって、細部まで細やかに掘り込んであるさすがの作品。

中二の微妙なお年頃と、義務教育ならではの教師のジレンマ、格差…

保護者に警察官がいたこともあり、子どもと大人の会話が上手く整理されています。


宮部みゆきさんの作品は、主軸の登場人物だけでなく、サブも細かく人物設定がされていて、奥行きがある。

その分読むのにパワーがいります。

生徒たちの家族構成や、コンプレックスや、家庭環境の問題。

今はきちんと覚えているけれど、二部が届くまで覚えていられるかしら…

当面の心配は、そこ。



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15:57 宮部 みゆき | コメント(2) | トラックバック(0)

冬の運動会 / 向田 邦子

2015/03/18
冬の運動会 (文春文庫)冬の運動会 (文春文庫)
(1998/01/10)
向田 邦子

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高校時代の万引事件のためエリート家庭から落ちこぼれた菊男は、ガード下の靴修理店の老夫婦のもとに入りびたっていた。

そんなある日、ふとしたきっかけから、菊男は謹厳な祖父や、一流ビジネスマンの父のもうひとつの姿を知ってしまう。

人間の本質と家族のあり方を追求して話題を呼んだ名作ドラマの小説化。 内容(「BOOK」データベースより)



かつては軍人で連隊長だった厳格な祖父、エリートで体面を気にするお堅い父。

望まれるような息子でいることが出来ない主人公:菊男は、息が詰まる完璧な家から逃げ出すように、ガード下の靴屋に入り浸る。


子どものいない夫婦にとっては、可愛い可愛い仮の息子。

肩ひじの張らない懐かしい匂いがする靴屋は、居心地の良い仮の家族。

両者の関係はまるで愛人のようで、その存在の大切さに、互いに手を離せなくなってしまう。


ひょんなことから、厳格な祖父にも、父にも、仮の家があることを知ってしまう菊男。

祖父も父も、家では見せることがない別の顔を、自分と同じように持っているのだろうか。


誰もが皆、自分に出来てしまった「見た目の形」に息が詰まるときがあると思う。

自分で作り上げておきながら、少しづつ違和感を覚え、その場所から逃げ出したくなるように。

身勝手なことかもしれないけれど、また女にとってはたまらなく迷惑な男たちなのだけど、誰も憎めない。

それが向田さんの作品の不思議なところ。

ダメ人間がギュギュっと集まって、みんな不器用にガチャガチャ音を立ててぶつかりながらも、根底が温かい。

その温かさに胸がいっぱいになります。


最初っからずるく生きているわけではなくて、一生懸命生きてきた結果の嘘。

何かを守るために、引くに引けなくなったり。

欠けたものを埋めようとして、違うものをはめてしまうちぐはぐさ。

向田さんの作品はみんな素敵です。


あとがきに書かれている女優の藤田弓子さんの言葉がまた印象的でした。

 向田さんがもう書いて下さらないので、この国のドラマは、レベルが落ちて行く一方だ。薄っぺらな登場人物が、下品なせりふをただペラペラ喋るだけ。「だから何なの?」というドラマばっかりになってしまった。
 向田さんが書き続けて下さっていたなら、この国の人達は、もっと深く、ものを見たり考えたりすることが出来ていたんじゃないかと思ってしまう。もっと賢く、優しい人間になれたんじゃないかと思ってしまう。


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20:44 向田 邦子 | コメント(4) | トラックバック(0)
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