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隣の女 / 向田 邦子

2015/05/14
隣りの女 (文春文庫)隣りの女 (文春文庫)
(2010/11/10)
向田 邦子

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「一生に一度でいい、恋っての、してみたかったの」

平凡な主婦が飛び込んだNYへの恋の道行を描いた表題作。

嫁き遅れた女の心の揺れを浮かび上がらせた「幸福」、「胡桃の部屋」。

異母兄弟の交流を綴った「下駄」。

絶筆となった「春が来た」の五篇を収録。

温かい眼差しで人間の哀歓を紡いだ短篇集。内容(「BOOK」データベースより)



「隣の女」とタイトルを見ると、それは主人公の女と隣の女が対比して描写されるのかなと、読む前から想像してしまう。

ある程度心づもりをして読み、実際想定内のことのはずなのに、読後、想像以上に深い部分が揺らされる。

残るのはいつも、柔らかくて、淡くて、淋しい気持ち。


良く考えたら、向田さんの作品にはいい女が出てこない。

隣の女が連れ込んだ男と情事を始めると、内職のミシンの手を止め、耳をそばだててしまう主婦。

相手が遥かにいい女だったら、それは別世界の話なのだろう。

だが相手の女も住む世界は違えど、間違いなく男の行動に一喜一憂してしまう小さな女。

対比のようで、似たような淋しい影もまた隣り合わせ。

表面的な勝ち負けではない、誰にでも内に持っている弱さが炙りだされる。


向田さんの作品を読んで、ぱっと晴れやかな気持ちにはならない。

かといって、完全に失望して終わるものもない。

女の底力と背筋の伸びた美しさを教えてくれ、また、頑張った強い女が「孤独」という貧乏くじを引く虚しさを、自嘲気味に見せる。

きっと男性受けはしないのだけれど、同性から見たら可愛い女。

それを美しい言葉と、時にリアルな激しい描写で同時に見せるから、とても素敵。



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21:04 向田 邦子 | コメント(0) | トラックバック(0)

冬の運動会 / 向田 邦子

2015/03/18
冬の運動会 (文春文庫)冬の運動会 (文春文庫)
(1998/01/10)
向田 邦子

商品詳細を見る

高校時代の万引事件のためエリート家庭から落ちこぼれた菊男は、ガード下の靴修理店の老夫婦のもとに入りびたっていた。

そんなある日、ふとしたきっかけから、菊男は謹厳な祖父や、一流ビジネスマンの父のもうひとつの姿を知ってしまう。

人間の本質と家族のあり方を追求して話題を呼んだ名作ドラマの小説化。 内容(「BOOK」データベースより)



かつては軍人で連隊長だった厳格な祖父、エリートで体面を気にするお堅い父。

望まれるような息子でいることが出来ない主人公:菊男は、息が詰まる完璧な家から逃げ出すように、ガード下の靴屋に入り浸る。


子どものいない夫婦にとっては、可愛い可愛い仮の息子。

肩ひじの張らない懐かしい匂いがする靴屋は、居心地の良い仮の家族。

両者の関係はまるで愛人のようで、その存在の大切さに、互いに手を離せなくなってしまう。


ひょんなことから、厳格な祖父にも、父にも、仮の家があることを知ってしまう菊男。

祖父も父も、家では見せることがない別の顔を、自分と同じように持っているのだろうか。


誰もが皆、自分に出来てしまった「見た目の形」に息が詰まるときがあると思う。

自分で作り上げておきながら、少しづつ違和感を覚え、その場所から逃げ出したくなるように。

身勝手なことかもしれないけれど、また女にとってはたまらなく迷惑な男たちなのだけど、誰も憎めない。

それが向田さんの作品の不思議なところ。

ダメ人間がギュギュっと集まって、みんな不器用にガチャガチャ音を立ててぶつかりながらも、根底が温かい。

その温かさに胸がいっぱいになります。


最初っからずるく生きているわけではなくて、一生懸命生きてきた結果の嘘。

何かを守るために、引くに引けなくなったり。

欠けたものを埋めようとして、違うものをはめてしまうちぐはぐさ。

向田さんの作品はみんな素敵です。


あとがきに書かれている女優の藤田弓子さんの言葉がまた印象的でした。

 向田さんがもう書いて下さらないので、この国のドラマは、レベルが落ちて行く一方だ。薄っぺらな登場人物が、下品なせりふをただペラペラ喋るだけ。「だから何なの?」というドラマばっかりになってしまった。
 向田さんが書き続けて下さっていたなら、この国の人達は、もっと深く、ものを見たり考えたりすることが出来ていたんじゃないかと思ってしまう。もっと賢く、優しい人間になれたんじゃないかと思ってしまう。


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20:44 向田 邦子 | コメント(4) | トラックバック(0)

阿修羅のごとく / 向田 邦子

2015/01/17
阿修羅のごとく (文春文庫)阿修羅のごとく (文春文庫)
(1999/01)
向田 邦子

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年老いた父に愛人がいた!

四人の娘は対策に大わらわ。

だが、彼女たちもそれぞれ問題を抱えていた。

未亡人の長女は不倫中、次女は夫の浮気を疑い、三女は独身の寂しさに心がすさみ、四女はボクサーの卵と同棲、そして母は…

肉親の愛憎を描き、家族のあり方を追求してきた著者の到達点ともいうべき力作。 内容(「BOOK」データベースより)



70を過ぎて不倫をしている父。

何も知らない母。

心配して何かと集まる姉妹。

あらすじだけでは「渡る世間は鬼ばかり」を思い起こしますが、向田さんの作品はさらりと美しい。


家族でありながら心の中を見通せるわけではない。

見通せないなりに側にいて、見えてしまったことを見えたと言わない。

相手の心を知り、言葉を飲んで、後姿を見守るだけ。

どれだけドロドロした血縁関係であっても、俯瞰で描写されているので、すとんと内容が入ってきます。


自分が三姉妹なので、とても伝わるものがありました。

女同士って厳しいんだよねぇ。

永遠にライバルなのかしら。

日頃は一番手厳しい間柄なのに、ピンチとなると絶対的な味方に変身。

根底での愛情の深さが温かかった。


姉妹のかぶり気味のテンポの良い会話が面白い。

彼女の夫たちが、圧倒された面持ちで後ろから眺めているのが、なお面白いです。



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14:32 向田 邦子 | コメント(2) | トラックバック(0)

きんぎょの夢 / 向田 邦子

2012/11/13
416727714Xきんぎょの夢 (文春文庫)
向田 邦子
文藝春秋 1997-08

by G-Tools

おでん屋を経営する砂子には、結婚してもいいと思っている男がいる。

ある日、店に見知らぬ女がやってきて―

婚期を逸した女のはかない夢を描いた表題作「きんぎょの夢」。

結婚をめぐっての親と子の心の行き違いをテーマにした「母の贈物」。

子のない老夫婦の哀歓を優しく見つめた「毛糸の指輪」の計三篇を収録。 内容(「BOOK」データベースより)



形は違えど、結婚が鍵となる3つの短編集。

両手を広げて幸せだと言うには、少し躊躇いがあった。

早くに親を亡くしていたり、捨てられたり、子どもが出来なかったり。

それが寂しいに繋がっていたわけではない。

愛され、頼りにされ、自分の居場所はちゃんとある。

なのに少しだけ引け目を感じ、一歩踏み出せない理由は。


向田邦子の作品をやはり好きだと思う。

普通の人の普通の生活。

スポットライトも当らない日常が、こんなに深い想いで成り立っているのかと気付かされる。


誰かの為に言葉を飲み込み、誰かの為に哀しい以上の笑顔を作る女。

言葉を胸の奥に仕舞う癖は、いつの間についてしまったのか。

在り方が儚げでとても美しい。


しかしつい、薄幸なヒロインの対極に据えられる女に、目がいってしまう私。

泣きたいだけ泣き、笑いたいだけ笑い、控えめとは縁のなさそうな、そのまんまな女。

そんな女がバタバタとやって来て、目の前の幸せをかっさらって行く。

細やかさに欠けた女を、薄幸な女の一粒の涙が支えている。

この絵、どうだ


私は向田作品に感動しながらも、少しいたたまれない気持ちになる。

だって私は、このバタバタした落ち着きのない女の方が、自分に近いと思うから。

間違っても、私が略奪を繰り返してきたと言っているのではない。

世の中にはこんなに自分の感情を抑えて、好きな人の為に言葉を飲んでいる女がいるのか…

と心から驚いているのです。


もし言い訳が赦されるなら。

このようなドタバタ女は、誰かが陰で涙を呑んでいることに気付いていない。

気付いていたら、立ち止まりますがな。


愛する人の幸せの為に、自分そのものを偽るような嘘を一生つき通そうと決心する。

その嘘を嘘と知りながら、一生騙されようと胸に収める。

すごく素敵で、この物語が大好きで、その上で、少し座り心地が悪い私



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15:17 向田 邦子 | コメント(2) | トラックバック(0)

思い出トランプ / 向田 邦子

2012/09/25
410129402X思い出トランプ (新潮文庫)
向田 邦子
新潮社 1983-05

by G-Tools

浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。

快活でありながら、かわうそのような残忍さを持つ人妻。

毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。

日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡さ、後ろめたさを人間の愛しさとして捉えた13編。

短篇の連作『花の名前』『かわうそ』『犬小屋』で第83回直木賞を受賞。



13の短編を13枚のトランプに見立てて作られた短編集。

向田邦子は読んでこなかったと思っていましたが、読み始めてみると「思い出トランプ」は既読だった。

結婚前、20歳前後だったのでしょう。

熟年夫婦の少し目を背け気味の世界は、若い私にはリアルに響いてこなかったのかもしれない。

全体的に記憶はうろ覚えだった。


しかし「大根の月」だけは、ラストまでしっかりと覚えていた。

毎日庖丁を研ぐのを日課にしていた母が、誤って息子の指を切断してしまう悲しい話。

改めて読み返しても、何一つ無駄のない作品。

これが向田邦子だったのか。


40代、50代の夫婦。

小さな不満からは目を逸らし、日々の生活に追われていたけれど。

子育てからも手が離れ互いに向き合う時に、今までおぼろげだったものに急に焦点があってしまう。


見てはいけなかった醜い妻。

見なければよかった情けない夫。


だからといって離婚になるわけではない。

すっと目を逸らしている間に、また同じ日常に戻るような錯覚。

ユーモアを交えながらの表現に笑みをこぼしてしまうものの、これはかなり怖い話。

怖いのに優しくて、優しい分だけ哀しみが立ち昇る。


夏蜜柑の胸、耳の赤い絹糸、とっさに隠した毛抜き。

他にはない何かが、印象深く胸に刻まれる。

向田邦子恐るべし。



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14:22 向田 邦子 | コメント(6) | トラックバック(0)
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