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貴婦人Aの蘇生 / 小川 洋子

2012/07/30
4022577002貴婦人Aの蘇生
小川 洋子
朝日新聞社 2002-01

by G-Tools


北極グマの剥製に顔をつっこんで絶命した伯父。

法律書の生き埋めになって冷たくなっていた父。

そして、死んだ動物たちに夜ごと刺繍をほどこす伯母。

この謎の貴婦人は、はたしてロマノフ王朝の最後の生き残りなのか?

『博士の愛した数式』で第1回本屋大賞を受賞し、多くの新たな読者を獲得した芥川賞作家が、

失われたものの世界を硬質な文体で描いた、とびきりクールな傑作長編小説。



小川洋子の良さが存分に出ている作品。

散りばめられたパーツは美しく、死と蘇生を語る目線はどこまでも優しい。

描写が美しく、少しユーモラスで、深く染み入る。

この本好きだなぁ。


剥製収集家であった夫の残した剥製に、夜ごとイニシャル‘A’を刺繍する伯母。

伯母の面倒をみることと引き換えに、学費を出してもらう語り手の私。

強迫性障害を持つ心優しい私の彼、ニコ。

剥製愛好家向け雑誌のライター、オハラ。


たった4人の登場人物。

それぞれの持つ個性が存分に生かされ、4本の軸が真っ直ぐに立っている。

痴ほうを疑われそうな伯母が一番掴みどころがなく、ニコやオハラがすっと浮き上がり見事


古びた館からほとんど出ない生活。

家の中は剥製で散らかり放題だし、掃除もろくに出来ていない。

生活臭も、獣臭もしている。

なのになぜか。

アナスタシア皇女かも知れない伯母からは、侵しがたい気品が消えることはない。


設定が日本だと確かに理解していたのに、海の向こうの世界の気持ちで読んでいた。

終盤で「日本」と言葉を見て、あ、そうだったと思ったぐらいに。


村上春樹の作品は、海外作品のように読んでしまう。

その時に感じる印象と少し似ているか。

小川洋子の世界も、俗世間の排除が徹底されていて、清潔な仕切りの向こう側に存在するかのよう。


強迫性障害のニコが、ひたすらに儀式を繰り返し、自分の試練と戦う姿は胸が痛い。

そんなニコに対し、儀式の大切さを誰よりも理解し、全身で優しく包み込む伯母。

命は蘇生され、繋がっていた。



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15:05 小川 洋子 | コメント(4) | トラックバック(0)

お婆ちゃんの味は愛情&クノール

2012/07/28
子どもの頃、母方の祖母も一緒に家族6人で暮らしていた。

世間一般のお婆ちゃんのイメージと言えば、「料理上手」なのかもしれないけれど。

残念なことに、祖母は料理が上手ではなかった。

箱入り娘のお嬢様で、昔からお手伝いさんのいる生活をしていた人。

当然料理をする必要もなかった。

母が子供の頃には、乳母、子守、お手伝いさん、看護婦さんと、常に数人いたそうな。

今じゃ考えられませんが、そんな時代もあったのね。


祖母も勿論料理の腕を上げるべく努力をしていた。

テレビで料理番組が放送されると、鉛筆片手に走ってくる。

一生懸命メモを取るときは、テレビの前で正座だ。

なのに、料理の腕は一向に上がらなかった。

今思い出しても、生真面目で可愛らしい人でした。


そんな祖母に代わって料理を任されてきたからか、母はとても料理上手。

出汁も丁寧に取り、インスタントはほとんど使わない。

母の仕事が遅くなる時だけ、祖母がご飯を作ってくれていた。


慣れぬ手つきで祖母が作ってくれる夕食は、大体こんな感じだった。

・ハムエッグ or 石井のハンバーグ

・クノールの粉末スープ

・レタスと胡瓜とトマトのサラダ

小学生の孫をアシスタントに作ってくれる、精一杯のご飯。


ある日お婆ちゃんは、孫を喜ばせようとちょっと頑張ってくれた。

いつもはコップにスープを入れるのに、この日は浅くてスープ皿っぽいベージュの器に入れてくれた。

お婆ちゃん、お洒落じゃないか!

たぶん母(祖母にとっては娘ですね)が作るよう真似してくれたんだと思う。

スプーンですくって上品に飲む私たち。


すると。

スープ皿の底から、何やら純和風の鳥の絵が出てきた。

姉たちのも見渡してみると、みんな何かしら描いてある。

キジ、ウグイス、カワセミ、ヒバリ…

お婆ちゃん…

これは煮物用の小鉢だぜ


子ども心にも、言っちゃあ悪いかなと思いました。

美味しかった母の手料理は勿論覚えているけど、こういうのがまた忘れられない思い出だったりします。

お婆ちゃん、ありがとね。




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00:49 父と母と… | コメント(8) | トラックバック(0)

ユリゴコロ / 沼田 まほかる

2012/07/26
4575237191ユリゴコロ
沼田 まほかる
双葉社 2011-04-02

by G-Tools

亮介が実家で偶然見つけた「ユリゴコロ」と名付けられたノート。

それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。

創作なのか、あるいは事実に基づく手記なのか。

そして書いたのは誰なのか。

謎のノートは亮介の人生を一変させる驚愕の事実を孕んでいた。

圧倒的な筆力に身も心も絡めとられてしまう究極の恋愛ミステリー! 内容紹介



「ユリゴコロ」の評価は高いのですが、私は今まで読んだ中で一番腑に落ちないものでした。

話題性を持たせつつ、読みやすく手を加えた感じ。

添加物が混ざっている。

沼田まほかるに死はつきものですが、この作品に関しての軽い扱いには救われません。


宣伝文句からは一見美しい恋愛ミステリに見えてしまうが、ミステリと割り切って楽しむには病的でつらい。

手記であるが分、内面に入り込みすぎてさらりと流せないものがある。


読みやすさ、面白さを追求したのなら、確かに今までの作品よりも口当たりは良くなっている。

ミステリとしても、過去の作品よりずいぶんミステリになっているし、

ドック喫茶のシーンになるとほっとする柔らかな空気が流れる。

きりきりと締め付けられた後に抜く部分ができ、一気に読ませる魅力もあったと思う。


その上で、犯人の行動と人の死の重さのバランスが、全く取れていないと感じてしまう。

もっともっと残虐な作品なんていくらでもあるのに、沼田まほかるが書くとしんどいのは何故だろう。

読後の心の重さは何ともいえない。

彼女は僧侶。

理由を付けて赦される殺人なんて、あるのだろうか。



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10:24 沼田 まほかる | コメント(2) | トラックバック(0)

インシテミル / 米澤 穂信

2012/07/24
4163246908インシテミル
米澤 穂信
文藝春秋 2007-08

by G-Tools


「ある人文科学的実験の被験者」になるだけで時給十一万二千円がもらえるという破格の仕事に応募した十二人の男女。

とある施設に閉じ込められた彼らは、実験の内容を知り驚愕する。

それはより多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う犯人当てゲームだった―。

いま注目の俊英が放つ新感覚ミステリー登場。内容(「BOOK」データベースより)



あらすじを読んで、おどろおどろしいホラーを想像していました。

予め準備されたクローズド・サークルで、賞金目当てに誰かが殺人を犯すのですから。

しかし意外なほど軽い。

陰湿さや戦慄の恐怖もありながら、テンポ良く一気に読める娯楽小説でした。


米澤穂信の主人公らしく、メインに据えられるのは草食系文系男子

サブには、お金のために殺し合う場には全くそぐわない、育ちの良いお嬢様。

彼らの持つ力の抜けた軽妙さが、このゆるい雰囲気を作り出す。


12人が同時に登場して、そのほとんどが大学生となれば、人物像はごっちゃになりがち。

確かにややこしくはありますが、この条件ではずいぶん読みやすく書き分けられていると思います。


ミステリとして内容が物足りないとの意見が多いのですが、私はそんなに嫌いじゃないんだな。

これは、ミステリ要素を含んだ娯楽小説として単純に楽しみたい。

設定そのものが、王様のお遊びなんですから。

もちろん立派な筋書きや、唸らせるほどのトリックも、あったに越したことはないんだけど。

中高生にもお勧めの軽快なミステリです。


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12:58 米澤 穂信 | コメント(0) | トラックバック(0)

白夜行 / 東野 圭吾

2012/07/23
4087744000白夜行
東野 圭吾
集英社 1999-08-05

by G-Tools

19年前の大阪の質屋殺し。

迷宮入りしたこの事件に関係した少年と少女が歩んだ道は…。

絶望の白い光の中、魂の荒野を行く男と女を、叙事詩的スケールで描く傑作ミステリー長篇。



東野圭吾作品の中でも特に好きな「白夜行」。

久しぶりの再読です。

私の記憶力の問題もあるのでしょうが、ストーリーが分かっていても面白い。


タイトルの所以も、犯罪に至った経緯も、流れに違和感がなく納得の積み上げ方です

何度も映像化されていますが、こういうストーリーは想像の世界で楽しみたいと思う。

誰よりも美しく、掴みどころのない恐ろしさを持つ雪穂。

雪穂の完璧な美しさを頭で作り上げる作業が楽しい。


改めて思ったのだけど、東野圭吾は説明をしつくさないから好きです。

凶器がなんであったか、ベルトは何故外れていたのか、亮二が何故こんな風に抱くのか。

いちいち全部に触れることのないまま、物語は終わる。

後でゆっくり考えると、何もかもが合点がいく

すべて計算しつくされていて、気持ちが良いのです。


不自然にならないように張られた伏線の数々が、最後にしっかりと効いてくる。

やはり今の東野圭吾より、この時期の方が好きだったなと思ってしまいます。


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11:26 東野 圭吾 | コメント(2) | トラックバック(0)
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