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神様がくれた指 / 佐藤 多佳子

2016/07/26


出所したその日に、利き腕に怪我を負ったスリ。

ギャンブルに負けて、オケラになったタロット占い師。

思いっ切りツイてない二人が都会の片隅でめぐりあった時、運命の歯車がゆっくり回り始めたことを、当人たちはまだ知らない。

やがて登場するもう一人がすべてを変えてしまうことも。

「偶然」という魔法の鎖で結ばれた若者たち。

能天気にしてシリアスな、アドベンチャーゲームの行方は。 内容(「BOOK」データベースより)



佐藤多佳子といえば、「一瞬の風になれ」など、高校生向けの青春小説が上手な作家さん。

このタイトルを見たときも、天才ピアニストの話かなと思ってしまった。

が、

物語の開始早々、スリが出所してきた。

まさかの、佐藤多佳子から漂うハードボイルド感。

どうやら主人公らしい。

それも、日本にもう数人しか残っていないと言われるほどの腕前のスリ師。

こんなに鮮やかにスリが出来るなんて…という展開だ。


スリの絶妙な指捌きを、神様がくれたことにしちゃっていいの??



設定に若干の違和感を感じてしまったのだけど、内容はテンポよく面白い。

話がどんどん展開しても、嫌なリズムはなく、心地よく読み進められてしまう。

入り口では無理があると思ったのに。

全然佐藤多佳子らしくないと思ったのに。

どうしてだろう…?



そうか、登場人物はいつもどおりの、いい人空気を放っているからかも。

刑務所経験がいくらあっても、心に闇を抱えていても、みんな佐藤多佳子の産み出した登場人物。

心地よい程、いい人ばかりです^^


結局はスリなのだから、どんなに鮮やかであっても、被害者が存在する限り、違和感は残ります。

それはそれとして、占い師、高校生の女の子、彼らを取り巻く人々、とても魅力的でした。



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14:48 佐藤 多佳子 | コメント(2) | トラックバック(0)

息子が格好いい 長男バージョン

2016/07/20
7月は三者面談の季節。

親バカ万歳、今回は長男です。


長男の学校の三者面談は、放課後に行われる。

私が一人で学校に向かい、教室で待つ長男と合流しなければなりません。


方向音痴の私でも、息子の学校にはグーグルマップがあれば行ける。

ただ、校舎が問題だ。

継ぎ足し継ぎ足ししているような学校の校舎。

目指すべき教室がどこにあるのか、よく分からないのです。


長男はゆっくりした子なので、かなり親切丁寧に、教室のある場所を説明してくれた。

本館、別館、新館、渡り廊下…

経路を説明している内に、母親にこれを理解させるのは無理だと思ったのだろう。

長男がとても面倒くさそうに、ぶっきらぼうに言った。

「あぁ、もういいや。正門の屋根のあるところで待ってて。俺が迎えに行くから」

きゃあーー!格好いい。



俺が迎えに行くから


俺が迎えに行くから


俺が迎えに行くからーー



母さん、頭の中でリフレインです。



「じゃあ、余裕をもって一時間半ぐらい前に家出るね」と、私が言うと。

「それは早すぎるわ。一時間前で十分だよ」と長男。

「いやー、この間の次男のとき、私のせいで遅刻したから、とりあえず家だけは早く出るよ」

「絶対一時間半前は早いんだけどな。んー、じゃあ俺もできるだけ早く迎えに行くわ」



出来るだけ早く迎えに行くわ


出来るだけ早く迎えに行くわ


出来るだけ早く迎えに行くわーー




もうリフレインが止まりませぬ。




当日、片手を上げて、恥ずかしそうに迎えに来てくれた長男。

面談を無事終えて、やれやれと一緒に教室を出た。

長男が前を歩き、後ろをついていくと、

「じゃ、ここから出れば帰れるから」と、出口の扉を指差して、さわやかに去って行った。


帰りもいちよう送ってくれていたんだ…

母さん、もううっとりです。



確か三者面談で、このままでは希望の大学は全部無理ですって言われたような気がするのだけど。


夢だったのかしら。

ええ、きっと夢だった、のでしょう。




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15:41 息子 | コメント(6) | トラックバック(0)

夏を喪くす / 原田 マハ

2016/07/11


「なんだか、硬いね」

ベッドで恋人が乳房の異変に気づいた。

仕事と恋を謳歌する咲子の人生に暗雲が翳る。

夫との冷えた関係に加え、急に遠ざかる不倫相手に呆然とする。

夏の沖縄で四十歳を迎えた女性の転機を描く表題作「夏を喪くす」。

揺れる女心の決意の瞬間を、注目作家が鮮烈に綴る中編集。内容(「BOOK」データベースより)



あれ、この人こんなに面白かったっけ。

以前に読んだ「楽園のカンヴァス」「キネマの神様」より、ずっとずっといい。


女性を主人公とした中編が4つ。

それぞれが満足のいく重みのある内容で、どれかに絞って感想を書こうと思うのだが、絞りきれないのです。

後悔や不幸が混ざり追い込まれるも、最後に手を伸ばさなければならない距離感で、淡い希望の光を見つける。

ぐっと手を伸ばすところで終わる感じが、この物語たちの共通点でしょうか。


「天国の蠅」は不思議と心に残ります。

父親の借金に追われ、まともな学生生活を送れなかった主人公と、どうしようもない父親との関係。

どんなにダメな父親でも、自分のことを「蠅」と見立てて書いた詩は、見事に美しい。

そうだ、「キネマの神様」のお父さんもダメだったなぁ。


男に甘えきることが出来ずに問題を一人で解決しようとする姿が、なんて不器用な…と思いつつも応援してしまう。

パサついた感じを出す上手さが、角田光代さんに近い印象。

手軽に読める中編で、雰囲気の良い作品でした。



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16:58 原田 マハ | コメント(4) | トラックバック(0)
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