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三面記事小説 / 角田 光代

2016/08/22


「私は殺人を依頼しました。恋人の妻を殺してほしいと頼みました…」

誰もが滑り落ちるかもしれない、三面記事の向こうの世界。

なぜ、姉夫婦の家は不気味な要塞のようになってしまったのか?

家出少年を軟禁する主婦の異常な執着心。

「死んでしまえ」と担任の給食に薬物を混ぜる女子生徒。

平穏な日常が音をたてて崩れてゆく瞬間のリアルな肌触り、追いつめられていく様子。

現実の三面記事に書かれた、いわくありげな事件から著者が幻視した、6つの短篇。 内容紹介より



普段紙面で見たのなら、読んだ端から忘れてしまいそうな三面記事。

そんな小さな記事の一つ一つに焦点を合わせ、時間を遡らせるように真相を見せる面白い作品です。

短編の最初には、その事件を報道した新聞記事が、少し薄めに印刷されている。

当然のことながら新聞記事を読んでから短編に入るわけなので、読者は小説のオチを知った状態で読むこととなる。

古畑任三郎的とでも言いましょうか。


犯人が分かっている。

捕まったことも分かっている。

「犯人」というものすごいレッテルを貼りながらのスタートなのに、私は犯人の心に吸い込まれるように引き寄せられてしまった。

人の心が壊れていく様。

小さな綻びが、とてつもない穴へと広がっていく怖さ。

犯人だなんてとても思えない。

一生懸命生きた人の弱さが、ただただ不幸で弱かった。


人を好きになることは難しい。

愛されることも難しい。

ちょっとしたすれ違いから心をずらしてしまう、角田光代はやはり上手いのです。



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10:56 角田 光代 | コメント(0) | トラックバック(0)

オレンジの壺 / 宮本 輝

2016/08/02
 

佐和子・25歳―とりたてて不幸なことなど何もない、しかし決して幸福ではない。

ある日、亡き祖父から残された日記帳を読んだ佐和子は、重大な秘密を知る。

パリへ旅立ち、祖父の本当の姿を探し求める彼女は、いつしか大切な何かを追い求めている。

平凡な自分に何ができるのか?

佐和子が見つける答えは―。

女性のひたむきな成長を描く宮本文学の傑作。 内容(「BOOK」データベースより)



結婚一年で離婚に至った25歳の主人公:佐和子。

元夫から別れ際に残された言葉が、彼女の心に深く突き刺さっている。

お前には、どこも悪いところはない。だけど、いいところもぜんぜんないんだ。女としての魅力も、人間としての味わいも、まったく皆無だ。


開始早々、このたった一つの台詞で、主人公の人となりをズバッと見せてしまうなんて。

印象的な言葉選びがとても美しい。

宮本作品を好きに思う要因の一つです。


また、描かれる人物からは、いつも独特の色のなさを感じます。

色彩の無さ。

単に平面的と言うのではなく、立体的な人物でありながら、少しパサついたような寂しさ。

生命力とかガツガツしたものがない。


そんな25歳にして辛辣な言葉を浴びてしまった佐和子が、いかにして自信を取り戻していくのか。

祖父の残した日記を元に、過去に遡る旅がとても物悲しく美しかったです。


この物語の中で過去に遡るうち、見えてくることと、見えてこないものが出てくる。

多くの人が亡くなっている今、想像のみで隙間を埋めなければならないこともある。

人の心を想像して、それでも結論を出すべきか。

人を傷つけてまで蒸し返さなくとも、分からないことは、分からないままでいいのではないか。

祖父の日記を前に葛藤を繰り返しもがく様が、とても誠実でした。

分かりやすく面白い娯楽作品ではないですが、宮本輝さんはやはり好きな作家さんです。



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11:39 宮本 輝 | コメント(2) | トラックバック(0)
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